相談支援事業とは?3つの種類と支援内容を解説
相談支援事業とは、障害のある方やその家族から相談を受け、さまざまな福祉サービスに関する情報提供や福祉サービスを利用するための手続きを行う障害福祉サービス事業です。
この記事では、相談支援の概略と相談支援の種類について紹介します。また、相談支援の利用事例も取り上げています。ぜひ事業所選びの参考にしてください。なお、相談支援事業には障害児を対象とした制度もありますが、今回は成人を対象とした制度について解説します。
このコラムを読んでもらいたい方
- 相談支援事業の利用を検討している方やそのご家族
- 一人暮らしを希望しているが、一人で準備するのは不安な方
- 自立した生活をするために相談支援事業をどのように活用すればよいか知りたい方
このコラムを読んで得られる情報
- 相談支援事業の内容
- 相談支援事業の支援の流れ
- 相談支援の種類
- 相談支援を利用した方の事例
相談支援事業とは
相談支援事業とは、障害のある本人や保護者などの相談対応、必要な情報の提供、福祉サービスの利用サポート、権利擁護のための必要な援助などを行います。具体的には「生活に困っているけれど、自分ではどうしていいかわからない」「福祉サービスを利用したいけれど、どこに行って何をすればいいのかわからない」といった悩みや疑問を受け付けます。
相談には、福祉の業務経験があり、障害者支援についての専門的な勉強をした「相談支援専門員」が対応します。
相談支援事業の全体像
相談支援には大きく分けて3つの種類があり、相談の内容に応じて「基本相談」「計画相談」「地域相談」に分けることができます。各種相談に応じる支援を「基本相談」、福祉サービスの利用支援を「計画相談」、地域で生活するための支援を「地域相談」と言います。
それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
【基本相談支援】さまざまな相談に対応
基本相談支援とは、障害者の生活に関する多様な課題や日々の暮らしに関する悩みなどについて、障害者本人や家族などからの相談に応じる支援です。障害福祉サービスを利用する・しないに関わらず、相談することができます。さらに、相談内容に応じて必要な情報提供や助言を行うとともに、市町村や障害福祉サービス事業者との連絡調整なども行います。
基本相談事業は、市町村が直接運営したり、社会福祉法人などが市町村からの委託を受け実施したりしています。
【計画相談支援】福祉サービスの利用について
計画相談支援とは、障害者本人や家族などからの相談対応に加え、障害福祉サービスを申請する際に必要となる「サービス等利用計画」を作成する支援です。また、障害者の生活状況や福祉サービスの利用状況などの確認も行います。
主な支援は「サービス利用支援」と「継続サービス利用支援」に分けられます。それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
サービス利用支援
「サービス利用支援」とは、障害者やその家族が抱える課題の解決を目指し、適切な福祉サービスの利用につなげる支援です。また、利用する福祉サービスの種類などを記載した「サービス等利用計画案」の作成も行います。福祉サービスの利用準備が整った後は、サービス事業者などと連絡調整の上で「サービス等利用計画」を作成します。
継続サービス利用支援
「継続サービス利用支援」とは、福祉サービスの利用期間内の一定期間ごとに立案したサービス等利用計画が適切かどうかモニタリングを行う支援です。目標の追加や修正といった「サービス等利用計画の見直し」を実施します。また、必要に応じて関係機関を集めた担当者会議を開催するほか、支給決定の更新に関する手続きも行います。
計画相談支援の流れ
計画相談支援の流れは以下のようになっています。また継続サービス支援では流れの「2」から「7」までを繰り返します。
- 相談
- サービス等利用計画案の作成
- サービス利用決定(支給決定)
- 担当者会議の実施
- サービス等利用計画の作成
- サービス提供開始
- モニタリング(計画の見直し)
【地域相談支援】地域での自立した暮らしについて
「地域相談支援」とは、障害者支援施設や精神科病院を出て地域生活を目指す障害者を支援するものです。
地域相談はさらに2種類に分けられ、「地域移行支援」と「地域定着支援」があります。
地域移行支援
地域移行支援とは、障害を持つ方が障害者支援施設(いわゆる入所施設)や精神科病院などから地域生活へ移行するために必要な支援を行います。具体的には、住居や日中の活動場所の確保、生活に必要な行政サービスの利用に関する相談や手続きのサポート、その他地域での生活において必要とされる外出に同行するなどの援助を行います。
地域定着支援
地域定着支援とは、地域生活における各種のトラブルを抱える一人暮らしや障害者のみ世帯の人を対象とした支援です。例えば行政手続きや近隣住民との関係に関する困りごとの相談に応じ、常時(24時間365日)の連絡体制を確保するとともに、緊急事態が発生した場合には現地へ駆けつける支援も行います。
相談支援に対応する事業所は大きく分けて2つ
相談支援事業を行う事業所には「一般相談支援事業所」と「特定相談支援事業所」の2つの種類があります。それぞれ機能が異なりますので、詳しく説明していきます。
なお、どちらも無料で利用することができます。
一般相談支援事業所
一般相談支援事業所とは、都道府県が指定する相談支援事業所のことを指します。障害当事者などからのさまざまな相談に応じる「基本相談支援」に加えて「地域相談支援」も行います。
障害を持つ方が、これまで生活してきた施設や病院を出て地域生活を送るにはさまざまな支援が必要です。地域相談支援として、地域に出てくるまでの支援や地域で暮らし続けるための支援を通して地域生活に関する総合的な支援を実施していきます。
特定相談支援事業所
特定相談支援事業所とは、市町村が指定する相談支援事業所のことを指します。さまざまな相談に応じる「基本相談支援」に加え、サービス利用を希望する方に向けた「サービス利用支援」「継続サービス利用支援」を行います。
福祉サービスの利用においては、個々の困りごとに合わせた支援計画の作成が必要です。特定相談支援事業所が担う役割として、情報提供や利用しているサービスが適切かどうかの見直しを通し、障害福祉サービスに関わる総合的な支援を実施します。
相談支援を利用した事例
ここでは実際に相談支援を利用し、個々の状況に合った解決策を立てた方の事例を紹介します。環境変化に困りごとがある方やグループホームを利用したい方とそれぞれ異なる事例を取り上げているため参考にしてください。
環境の変化が苦手で不適応行動があったAさん
【基本情報】
34歳・男性・統合失調症
【生活状況】
・アパートで一人暮らしをしており、日中はほぼ自宅で過ごしている。
【困りごと】
・日中活動の幅を広げたいが、一歩踏み出せない。
【本人の願い】
・体調が安定しているので、社会参加をしてみたい。
【支援内容】
・入院していた病院のソーシャルワーカーからの相談で、まずは本人と面会し現在の状況について聞き取りを行いました。以前は不適応な行動がありましたが、入院を経て状態が改善したため退院後の支援をしてほしいとのお話がありました。
・退院後の居住地を見つけ、退院後はそこで生活を始めることになりました。時間も経ち、そろそろ社会との関わりを持ちたいとのお話が出たことから、最初の一歩としてどういった活動が適しているかについてを関係機関で話し合いました。
・本人の不安解消や希望の実現に向けて、まずは「自信の回復」を目標に、今まで問題なくできていることの確認をしてみましょうと提案しました。また、社会参加に向け地域で本人の受け入れ態勢を整えてもらい、不安を感じてもすぐに相談できる環境を構築するように関係各所に働きかけを行いました。
本人だけでなく住んでいる地域にも働きかけることで、不案が解消され希望が実現できる場合もあります。今後も本人とモニタリングを行い、現状に合わせた支援を行っていきます。
グループホームを出て一人暮らしを目指すBさん
【基本情報】
26歳・男性・精神発達遅滞
【生活状況】
・現在はグループホームを居住地として、日中はX会社に勤務している。
【困りごと】
・自分の気持ちを言葉で伝えにくい。
【本人の願い】
・グループホームから出て、単身で生活をしたい。
【支援内容】
・まずは、相談支援専門員が本人から「困りごと」や「本人の願い」を聞き取るアセスメントを行いました。そこでは「自分の考えを言葉にしにくい」といった困りごとや「単身で生活したい」といった希望が出ました。
・次に、本人を支援する関係者で会議を開き、聞き取った内容に対してどのような支援をすれば課題が解消されるか、希望を叶えられるかを話し合いました。
・最後に、話し合った内容をもとに本人に支援について伝え、例えば「自分の気持ちを話せる相談先一覧を作ってみよう」「一人暮らしをするために、まずは住みたい町の散策をしてみよう」など、具体的な方法を提案しました。
悩みの解消や希望の実現はすぐにはできませんが、まずはできることから進めていき、最終的に本人が満足できるような状態になるように支援を継続しています。
相談支援のご相談はノードワークスへ
今回は、相談支援事業の概要やサービスの種類、利用の流れなどを紹介しました。相談支援事業所では、障害のある人や難病を抱えている人が社会参加できるように支援する障害福祉サービスを提供しています。
「生活に困っているけれど、自分ではどうしていいかわからない」「福祉サービスを利用したいけれど、どこに行って何をすればいいのかわからない」といった悩みや疑問に対応した支援を行っておりますので、生活の中で不安や困りごとのある人にとっては大きな助けとなるでしょう。
また、ノードワークスは「自分の“なりたい”を実現する」就労移行支援事業も行っています。就職することはもちろんのこと、就職活動だけでなく、生涯役立つスキルを身に付けることを目指します。また、就職後は仕事を継続できるように定期的なサポートも行っているため、安心してください。
生活や就職において困りごとがある方は、ホームページの「お問い合わせ」もしくはお電話でご連絡ください。
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