就労継続支援A型・B型とは?就労移行支援との違いや選び方について
障害福祉サービスを利用して就職を考えている人にとって、就労移行支援のほかにも就労継続支援A型・B型といった選択肢があります。就労移行支援とは訓練の内容や対象者、目的が異なるため、今回は主に就労継続支援A型・B型について紹介します。また、就労移行支援との違いや選び方についても詳しく解説します。自分にあった就労支援がわからない人や、就労支援の利用について不安をお持ちの人などぜひ参考にしてください。
【このコラムを読んでもらいたい方】
- 就労継続支援について詳しく知りたい方
- 就労継続支援A型・B型の違いがわからない方
- 自分に合った就労支援先を知りたい方
【このコラムを読んで得られる情報】
- 就労継続支援A型の対象者や仕事内容、利用料金について
- 就労継続支援B型の対象者や仕事内容、利用料金について
- 就労移行支援との違い
- 自分に合った就労支援先の選び方
就労系障害福祉サービスの全体像
障害者の就労を支援する公的な福祉サービスは大きく分けて4つあります。
- 就労移行支援
一般企業への就労を希望する障害のある方に対し、就労に必要な知識や能力の向上や実習を行い、職場探しのサポートを行う - 就労継続支援A型
一般企業への就労が困難な障害のある方に対し就労の機会を提供し、一般就労に必要な知識や能力の向上を図る - 就労継続支援B型
一般企業への就労が困難な障害のある方に対し生産活動及び就労の機会を提供し、一般就労に必要な知識や能力の向上を図る - 就労定着支援
障害がある方との相談を通じて、企業や関係機関との連絡調整やそれに伴う課題解決に向けて支援を実施
これらはすべて「障害者総合支援法」に基づく事業で、それぞれに目的や対象者が異なります。
就労継続支援A型とは
一般企業への就労などが困難な人を雇用して、就労の機会を提供するとともに能力等の向上のために必要な訓練を行う事業です。データ入力などの業務を行いつつ訓練も行っていくため、給与を得ながら実務能力の向上を図れるといった利点があります。
厚生労働省の資料によると、令和4年12月時点で全国で4368カ所の事業所があり、82,990人が利用しています。
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等について」
対象者
就労継続支援A型の対象者は、原則18歳~65歳未満の障害のある人で、一般企業での就労や就労移行支援の利用が困難な人です。
具体的には、
- 就労移行支援を利用しても一般就労ができなかった人
- 特別支援学校を卒業したが、一般就労での就職ができなかった人
- 一般就労での安定就労が難しく、離職し就労継続支援を検討している人
などが挙げられます。
就労継続支援A型は利用期間に制限がないため、本人が望む限り通所することができます。
仕事内容
事業所ごとに仕事内容は異なりますが、一例として下記の業務内容があります。
- PCでのデータ入力代行
- カフェや飲食店での接客対応
- 部品加工作業
- ビル等の清掃作業
このように業務内容は一般就労に近いですが、フルタイムではなく1日4時間~など短時間勤務のものが多い傾向です。
給料
就労継続支援A型では一般就労と同じく雇用契約を結んで働くため、最低賃金の金額が保障されています。
厚生労働省の調査によれば、令和3年度の平均賃金は月額81,645円となっています。現在は最低賃金も上がっていることから、この金額よりも少し多くなっているかもしれません。
出典:厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」
利用料金
就労移行支援A型の利用料金は、前年度の世帯収入(本人とその配偶者が対象)と、事業所を利用する日数によって決まります。前年度離職等で収入がなければ、利用負担なく通所できます。
下記の表は厚生労働省が公表している障害者の利用者負担額の一覧です。
(注1)3世帯で、障害者基礎年金1級受給の場合、概ね300万円以下の世帯が対象になります。
(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」
実際は、ほとんどの人が0円~9,300円で利用しています。
就労継続支援B型とは
就労継続支援B型は、一般企業等での就労が困難な人へ就労する機会を提供するとともに、能力等の向上のために必要な訓練を行う事業です。就労継続支援A型よりも業務内容が軽めで単純な作業であるため、シングルタスクやルーティーンワークを希望する人にとって働きやすい環境です。
厚生労働省の資料によると、令和4年12月時点で全国で16,003カ所の事業所があり、32万2,414人が利用しています。
出典:厚生労働省「障害福祉サービス等について」
対象者
就労継続支援B型の対象者は、障害のある人であれば年齢制限はありません。現時点で一般企業での就労や、就労移行支援の利用が困難な人です。また、そのほかにも下記に該当する人も利用対象者となります。
- 企業等や、就労継続支援事業(A型)就労経験がある人で、年齢や体力の面で雇用されることが困難となった方
- 50歳に達している、または障害基礎年金1級受給者
- 1または2に該当せず、就労移行支援事業者によるアセスメントにより、就労面に係る課題等の把握が行なわれている方
なお、利用期間に制限はありません。
仕事内容
業務内容は軽作業的なものが多く、自分のペースで仕事をしやすいのが特徴です。1日1時間や週1日など、自分の体調に合わせて利用ができます。
事業所ごとに仕事内容は異なりますが、一例として下記の内容があります。
- パンやクッキーなどの作業工程
- 衣類のクリーニング作業
- 箱の組み立て
- 手芸品の製作
ここで訓練を積み重ね、一般就労や就労継続支援A型へとステップアップしていく人もいます。
給料
就労継続支援B型は就労をする場でありますが、雇用契約を結びません。そのため、「賃金」ではなく「工賃」と呼びます。業務内容は軽い作業が多いことから、最低賃金を下回ることが多い傾向です。
厚労省の調査によると、令和3年度の平均工賃は月額16,507円となっています。
利用者の約半数が月の工賃が1万円台のため、障害基礎年金と工賃で生活しているのが現状です。
出典:厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」
利用料金
就労移行支援B型の利用料金は、前年の世帯収入(本人とその配偶者が対象)と、事業所を利用する日数によって決まります。前年度離職等で収入がなければ、利用負担なく通所できます。
(注1)3世帯で、障害者基礎年金1級受給の場合、概ね300万円以下の世帯が対象になります。
(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」
実際は、ほとんどの人が0円~9,300円で利用しています。
就労継続支援A型とB型の違い
A型とB型の大きな違いは「雇用契約」を結ぶかどうかにあります。一般就労が難しい障害者に対して就労の機会を提供しつつ、就労に必要な能力の向上や訓練を行う事業は同じですが、A型には「雇用契約」があり、最低賃金が保障されています。したがって一般就労に近い形での働き方といえます。
一方B型は「雇用契約」を結ばないため、一般就労が困難であり、雇用契約を結んでの就労が難しい人向きといえるでしょう。
就労継続支援と就労移行支援・就労定着支援の違い
ここからは、就労継続支援と、就労移行支援や就労定着支援との違いについて見ていきましょう。
〈就労移行支援とは〉
一般企業へ就職を希望する障害者に対し、一定期間、就労に必要な知識や能力をつけるための訓練を行う事業です。名前に「移行」とつくとおり、原則2年までという期限付きで、あくまで一般企業での就労を目指すための通過点という位置付けになっています。
就労移行では日々訓練を行っており、実際に働くわけではないため利用中の給料や工賃は発生しません。
〈就労定着支援とは〉
一般就労した人に、就労に伴う生活面や社会面での問題や課題について相談や指導、助言などの支援を行う事業です。就労継続支援や就労移行支援のほかに、生活介護や自立訓練などの福祉サービスを経て就労した人も就労定着支援の対象になります。
就労継続支援A型・B型と就労移行支援、どれを選ぶべき?
結論としては、一般企業への就職を希望していて、ある程度働く準備が整っている場合に就労移行支援を選ぶのが最適です。まだ一般企業で働く準備や能力に課題が残っている人は、就労継続支援を利用するとよいでしょう。また、A型・B型については年齢や雇用契約に基づいて自分が働いていけるかどうか判断することをおすすめします。
下記の図は厚生労働省が公表している「改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル 個人特性の階層構造」です。働くためには、下記の「職業準備性」が整っていることが必要です。ピラミット型に就労に必要なスキルが重なっています。
このピラミットの下部(疾病・障害の管理)が基盤となり、上部に向かって段階的に必要なスキルが表示されています。いきなり作業スピード(ピラミット上部)だけがアップしても、基盤となる生活リズムや自己管理ができていないと働けません。
引用:厚生労働省「改訂版・就労移行支援事業所による就労アセスメント実施マニュアル」
就労継続支援を利用する流れ
就労継続支援の利用は次の4ステップで進めていくと、自分に合った事業所を利用することができます。
近くの就労継続支援事業所を探す
お住まいの役所の障害福祉課や、ハローワーク、インターネットで調べることができます。
また、通いやすい場所やエリアで探すことも可能です。一部の事業所では送迎を行っている施設もあるので、ご自身の通いやすい事業所を探してみましょう。
見学して、利用したい事業所を決める
気になる事業所が見つかったら、複数の施設を見学してみましょう。その際、仕事内容や職場の雰囲気、賃金や工賃が自分に合っているかどうか確認し見極めることが大切です。利用したい事業所が決まったら、A型事業所は面接(雇用契約があるため)、B型事業所は体験利用することができます。
障害福祉サービス受給証を申請する
事業所を利用する障害福祉サービス受給者証は、お住まいの役所の障害福祉課窓口にて申請します。申請後、認定調査やサービス等利用計画書の作成が行われます。
認定調査とは、本人の障害程度の区分や支給の要否決定を行うために、面接にて心身の状況や置かれている環境について調査を行うことです。サービス等利用計画書は、ご本人が自立した生活を送るためにどのようにサービスを利用するかを明らかにしたものです。利用について妥当性が認められると、サービスの支給決定がなされ利用開始の許可がおります。
就労継続支援事業所と利用契約を結ぶ
利用を希望する就労継続支援事業所と利用契約(A型の場合は雇用契約)を結びます。一部、障害福祉サービス受給証が交付されるまでの間、トライアルで利用できる事業所もあります。
自分に合う就労支援を見極めよう!
障害福祉サービスを利用した就労支援はいろいろな選択肢があるため、自分に合う事業所選びが就職への近道になります。心身の状況を鑑み、今の自分に合った事業所からスタートし、できることを増やしていきましょう。
ノードワークスでは、就職はもちろんのこと、就職活動だけでなく生涯役立つスキルを身に付けることも目指しています。就職後は仕事を継続できるように、定期的な訪問や面談サポートなど原則6カ月の定着支援も行っているため安心してご利用いただけます。そのほか、卒業後にはグループホームという受け皿もあり、自立した生活を送るための施設も充実しております。
お仕事でお悩みの方や就労移行支援について興味のある方は、ホームページの「お問い合わせ」もしくはお電話でご連絡ください。
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