就労移行支援は失業保険をもらいながら通える!手続きのポイントも解説
就労移行支援事業所を利用している間は給料や工賃が出ず、アルバイトなども原則禁止になります。そのため生活費は自身の貯金から捻出しなければならないなど、やりくりに苦労する人は多く見られます。
一方、直近で雇用保険に加入して働いていた方は、手続きを行えば失業保険をもらいながら就労移行支援事業所を利用できる可能性が高い傾向にあります。
失業保険が受給できれば安心して就労移行支援事業所に通い、再就職に向けた訓練に専念することができます。失業保険の受給条件や手続きがやや複雑なので、事前にしっかり確認しておきましょう。
【このコラムを読んでもらいたい方】
- 就労移行支援事業の利用を検討している方やそのご家族
- 就労移行支援事業を利用したいが金銭的に不安のある方
- 失業保険の受給方法を知りたい方
【このコラムを読んで得られる情報】
- 就労移行支援に通う際に必要なお金
- 失業保険の受給条件、受給期間、手続きの流れ
- 失業保険を貰いながら就労移行支援を利用する際のポイント
就労移行支援に通う際に必要なお金
就労移行支援事業所に通う際には、一体どれくらいのお金がかかるのか事前に知っておくことが大切です。
- 就労移行支援事業所の利用料
- 利用料以外の費用
- 生活費
それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
就労移行支援事業所の利用料
就労移行支援事業は「障害者総合支援法」に基づく福祉サービスです。利用料の総額は施設の所在地や職員の配置状況、専門職員の有無、提供するサービスなどによって異なりますが、個人が負担する金額は世帯収入によって上限が決まっています。
前提として、障害福祉サービスは利用料の総額のうち「9割を市区町村が負担」し、「残りの1割を利用者が自己負担」する仕組みになっています。
そしてこの1割の自己負担分についても、所得によって上限が設定されています。利用者の多くは自己負担額0円で利用しています。
引用:厚生労働省「障害者の利用者負担」
利用料以外の費用
一例として、利用料以外に必要と考えられる費用をご紹介します。あくまで例ですので、実際に必要となる料金については、事前に通所予定の事業所で確認しておきましょう。
【利用料以外の費用の例】
- 自宅から就労移行支援事業所までの交通費
- 実習先や面接に行くための交通費
- 昼食代
- 資格を取得する場合はその受験料や教材費
交通費は自治体によって助成金が出るところもあります。また、昼食は事業所によって無料で提供してくれるところもあります。
生活費
生活費とは、就労移行支援の利用とは関係なく、生きていくのに必要なお金を指します。個人差が大きい部分となりますが、自身の1カ月あたりの必要生活費を把握しておくことが大切です。
失業保険は就労時の給与と比較して金額が下がる可能性が高いため、支出の見直しが必要になることも想定しておきましょう。
【生活費の例】
- 家賃
- 水道光熱費
- 食費
- 携帯料金
- 社会保険料や税金
- 洋服代、娯楽費など
失業保険とは
失業保険とは、「雇用保険」という社会保険制度の「基本手当」のことを指します。雇用保険に加入して働いていた方が失業したときに、必要な手続きを踏むことで生活の心配をしないで就活に専念するために支給されるものです。
障害者手帳を持っている人は「就職困難者」に該当し、一般的な失業者よりも受給条件が緩和されることがあります。
- 受給の条件
- 受給期間
- 給付日数
- 支給額
- 手続きの流れ
以下で受給の条件や手続きについて詳しく解説します。
受給の条件
受給の条件は大きく分けて3つあります。
- ハローワークに求職の申し込みをしていること
- いつでも働ける意思と能力があるが、失業の状態にあること
- 離職の日以前2年間に、被保険者期間(※1)が通算して12カ月以上あること(※2)
(※1)被保険者期間とは、雇用保険に加入していた期間のうち、賃金が支払われた日が11日以上または80時間以上ある月のことです。
(※2)会社の倒産や解雇、雇止めなど一定の理由で離職した人は、「離職の日以前1年間に被保険者期間が通算6カ月以上」でも受給できます。
受給の条件のポイント
「いつでも働ける状態」が条件なので、病気の症状が安定せず働けない状態のときは対象外になります。その場合は受給期間の延長申請が可能です。詳しくは後述します。
受給期間
受給期間とは、失業保険を受け取る権利がある有効期間のことを指します。原則は「離職した日の翌日」から1年間となります。もし受給期間を過ぎてしまうと、給付日数(実際に失業保険を受け取れる日数)が残っていても、支給されません。
受給期間の延長申請
病気、けが、妊娠出産、育児などの理由で30日以上働けない状態のときは、最長で3年まで受給期間を延長することができます。受給期間の延長は「もらえる総額」が増えるという意味ではなく、あくまで受け取るための「有効期間」が延びるということです。
延長申請を行う場合は、引き続き30日以上職業に就くことができなくなった日の翌日以降、早期に申請していただくことが原則です。詳しくは最寄りのハローワークで確認しましょう。
給付日数
給付日数とは、実際に失業保険をもらえる日数のことを指します。給付日数は、離職日時点の年齢、被保険者期間、離職理由によって細かく決められており、人によってその日数は異なります。
また「就職困難者」に該当した方は、それ以外の方よりも給付日数が長く設定されます。
一般的な離職者の給付日数は、被保険者期間に応じて「90日・120日・150日」で設定されています。
就職困難者の場合は被保険者期間と年齢によって「150日・300日・360日」となっており、一般的な方よりも長く設定されているのが特徴です。
引用:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
支給額
失業保険において、1日あたりの支給額のことを「基本手当日額」と言います。基本手当日額は離職前の給与額のおよそ50〜80%で設定され、給与水準が低かった人ほど80%に近い割合で支給されます。
また、基本手当日額には、年齢によって上限と下限が設定されています。
例として、29 歳で賃金日額(離職した日の直前6カ月間に支払われた賃金の合計を180で除して算出した金額のこと)が17,000円の人の場合、令和5年8月1日時点の基本手当日額(1日当たりの支給額)は6,945円となります。
以下に年齢別基本手当日額の上限・ 下限の一覧表がありますので、そちらを参考に、もし自分が失業保険を受給するならいくらもらえるのかを調べてみましょう。
※令和5年8月1日時点
引用::厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります~令和5年8月1日から~」
手続きの流れ
失業保険を受給するまでの手続きは、以下の5ステップあります。
1、退職した会社で離職票を発行してもらう
→2週間以上経っても届かない場合は会社に確認してみましょう。
2、ハローワークに離職票を持って行き、求職の申し込みをする
→ハローワークで失業保険の受給申請と求職申し込みをします。
3、ハローワークの雇用保険説明会に出席する
→失業保険受給や求職活動に関する説明が行われます。
4、指定された認定日ごと(原則4週間に1回)にハローワークに行き、失業認定を受ける
→失業認定を受けるためには、求職活動を規定回数行う必要があります。
5、認定された期間分の失業保険が振り込まれる
→認定日からおよそ1週間程度で、指定口座に失業保険が振り込まれます。
失業保険以外で、就労移行支援を利用中の生活費を確保する方法
失業保険以外で生活費を確保するには、以下の制度を利用する方法があります。
- 貯金や家族の援助
- 傷病手当金
- 障害年金
- 生活保護
それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
貯金や家族の援助
失業保険の利用以外では、貯金の切り崩しや家族の援助によって生活費を確保し就労移行支援に通う人は多い傾向にあります。
ご家族から金銭援助を受ける場合においては、なぜ生活費を援助してもらうかの理由を説明する場面もあるでしょう。就労移行支援は障害福祉サービスの中でも比較的新しいため、親世代では知らない人も多くいらっしゃいます。
制度の内容や支援内容を具体的に説明し、「〇カ月後の就職を目指す」など期間の見通しを伝えることによって、ご家族の理解も得やすくなります。通所する事業所の説明会に参加し、サービス内容を確認しておきましょう。
傷病手当金
傷病手当金とは、企業などの健康保険に加入している人が、けがや病気などの理由により働けなくなった際に支給されるお金です(※国民健康保険の人は対象外)。
手当の金額は休職前の給料の3分の2程度であり、給付期間は最長1年半となっています。在職中から受給していれば、途中で勤務先企業を退職しても継続給付される場合もあります。
傷病手当金に関する詳しい情報は、自身が加入している(または加入していた)健康保険組合のサイトで調べることができます。
※全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/
障害年金
障害年金は、病気やけがなどで障害を抱えた方が受け取ることができる年金です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日に加入していた年金によって、国民年金なら「障害基礎年金」が、厚生年金なら両方が支給されます。
支給される年金の金額は、障害の等級によって決まります。また、給付期間は障害の状態が続く限り継続的に受け取ることができます。
障害年金は更新手続きが必要であり、仮に症状が改善した場合は支給停止になることもあります。詳しくは日本年金機構のホームページに記載されていますので、確認してみましょう。
※日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/index.html
生活保護
生活保護とは、生活に困窮している方に対し、健康で文化的な最低限度の生活を保障するための制度です。
生活保護に関する相談や申請の窓口は、現在お住まいの地域を所管する福祉事務所の生活保護が担当しており、福祉事務所は市役所や町役場等にあります。
受給が決定した場合は、生活費(食費、光熱水費など)や家賃、医療費などが支給されます。また、保護費と呼ばれる手当の金額は、年齢や地域、世帯構成によって決まります。
詳しい情報は厚生労働省のホームページで調べられますので、受給を考えている方は確認してみると良いでしょう。
※厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/seikatuhogo/index.html
失業保険をもらいながら就労移行支援を利用する際のポイント
最後に、失業保険をもらいながら就労移行支援を利用する際のポイントをいくつかご紹介します。うまく制度を活用し、安心して訓練に参加できるようにしましょう。
- 「就職困難者」と認められれば、優遇が受けられる
- すぐに働ける状態でないときは、受給期間の延長申請をしておく
- 失業保険と障害年金は両方受け取れる
以下で受給の条件や手続きについて詳しく解説します。
「就職困難者」と認められれば、優遇が受けられる
ハローワークにて失業保険を受ける際、「就職困難者」と認められれば優遇を受けることができます。仮に障害者手帳がない場合でも、医師の診断書を提出することで認められる場合もあります。
「就職困難者」として認められた場合のメリットは以下のようなものがあります。
- 給付日数が通常より長くなり、支給額も多くなる
- 失業認定に必要な「求職活動の実績」が通常より少なくて済む
- 就職が決まった時点の支給残日数が少なくても「常用就職支度手当」がもらえる場合がある
詳しい手続きや条件などは、最寄りのハローワーク窓口にてご確認ください。
すぐに働ける状態でないときは、受給期間の延長申請をしておく
失業保険を受給する条件の一つに、「いつでも働ける意思と能力があるが、失業の状態にあること」があります。
もし身体的・精神的な病気が原因で離職し、現在も病状が安定していないという場合、早めに延長申請を出しておかないと受給期間(失業保険を受給できる有効期間)が過ぎてしまいます。
仮に受給期間が過ぎてしまった場合、給付日数(実際にもらえる日数)が残っていても、失業保険は支給されません。
病気やけがなどの理由で30日以上働けない状態の場合は最長で3年まで受給期間を延長できるので、忘れずに延長申請を行っておきましょう。
失業保険と障害年金は両方受け取れる
失業保険と障害年金を受給する場合、合算した金額を受け取ることができる場合があります。
他の年金や手当との組み合わせの場合だと、同時に支給した際に「もらい過ぎ」になるのを防ぐため、どちらかを停止または減額するなどして支給金額を調整する「併給調整」という仕組みがあります。
併給調整の例としては、「障害年金と傷病手当金」や「障害年金と生活保護」があります。
この組み合わせの場合は金額の調整が入るため、どちらか一方しか受け取れない、あるいはどちらかの金額を減額して支給するなどの処置が取られるので注意が必要です。
就労移行支援に通う際は、失業保険の手続きも忘れずに!
今回は、失業保険など所得補償を受けながら就労移行支援を利用する方法について解説しました。
ノードワークスでは就労移行支援事業を行っています。無償で昼食提供も行っており、事業所がある綾瀬市では通所交通費助成があるなど経済的な面でのメリットもあります。
就職はもちろんのこと、就職後も仕事を継続できるように定期的なサポートも行っているため、安心してご利用いただけます。もし気になった方は、ぜひ一度見学にお越しください。
また、生活や就職において困りごとがありましたら、ホームページの「お問い合わせ」もしくは「お電話」にてご連絡ください。
この記事へのコメントはありません。