就労移行支援の利用条件とは?対象者や利用期間、利用の流れを解説
就労移行支援とは、障害福祉サービスのひとつです。就職を希望している障がいや難病を持つ方に向けて、スキルの習得や就職活動のサポートなどさまざまなサービスを提供しています。
就労移行支援は新しい一歩を踏み出そうとしている人の福祉支援ですが、一方でいくつかの利用条件があるのも事実です。
この記事では、就労移行支援の概要や具体的な利用条件について解説します。「どういった人が利用できるのか」「どのくらいの期間利用できるのか」「中断や延長ができるのか」といった点も取り上げているため参考にしてください。
・この記事を読んでほしい方
- 就労移行支援をどのくらい利用するか考えている方
- 就労移行支援の利用の流れを知りたい方
- 2回目や再開利用を考えている方
・この記事を読んで分かること
- 就労移行支援でできること
- 就労移行支援を利用するためのステップ
- 就労移行支援の利用条件や2回目利用などについて
就労移行支援の概要
就労移行支援は、障がいや難病を抱えている人で、一般企業への就職を目指している人をサポートする障害福祉サービスです。障害者総合支援法に基づいたサービスで、就労移行支援事業所は日本各地に3,000ヶ所以上あり、約3万5,000人が利用しています。
就労移行支援事業所では、一般企業で働くにあたって必要となる知識やスキルを身につけるための訓練、就職活動のサポートなどを行っている点が特徴です。さらに、就職後の定着支援も行っており、手厚いサービスを受けられます
就労移行支援でできること
就労移行支援には利用条件があるものの、実際にサービスを利用できた場合は以下のようなサポートを受けられます。
- 就労に向けたトレーニング
- 職場見学・実習
- 就職活動・面接練習
- 定着支援
就労移行支援事業所では、ITや簿記など仕事をするにあたって、さまざまなスキルを身につけられるトレーニングを行っています。また、実際の企業に出向いて職場見学を行ったり、実習を通して仕事を経験したりする体験も可能です。
就職活動に取り組む際には、履歴書や職務経歴書の添削、企業分析・自己分析のサポート、模擬面接の実施など選考に役立つサポートも受けられます。そのほかにも、就職後にすぐ退職してしまわないよう、不安な気持ちに寄り添って利用者と事業所の担当者、企業の担当者で三者面談を行うなどの定着支援も行ってくれる点が特徴です。
就労移行支援の利用料金
就労移行支援を利用するには、以下のような利用料金を支払う必要があります。
区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)
入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除く |
9,300円 |
一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
就労移行支援の利用料金は世帯収入によって異なります。ここでいう世帯とは「本人と配偶者の世帯」であり、親は含まれません。また、生活保護受給者や低所得者などは負担なしで利用可能です。
実際に就労移行支援事業所では、9割前後の人が無料で利用しているとされています。交通費は原則自己負担ですが、一部の自治体では助成金が出る場合もあります。ただし、就労移行支援事業所はあくまでも就労に向けたサポートを行う場所であるため、賃金や工賃は発生しません。
出典元:厚生労働省「障害者の利用者負担」
就労移行支援の利用条件
就労移行支援を利用するには一定の条件を満たしたていなければなりません。ここでは就労移行支援の利用条件を紹介します。ここで取り上げる利用条件のポイントは以下の2つです。
- 対象者
- 利用期間
「就労移行支援の利用条件がいまいちわからない」と頭を悩ませている方は参考にしてください。
対象者
就労移行支援の利用条件は、「18歳以上65歳未満の人」「障がいもしくは難病を抱えている」「一般企業への就職を目指している」「受給者証を所有している(障害者手帳は無関係)」の4つを満たした対象者が利用できます。
具体的な障がいや難病の例としては以下のようなものがあげられます。
- 精神障がい:統合失調症、うつ病、双極性障がい、不安障がい、てんかん、適応障がいなど
- 発達障がい:注意欠如・多動性障がい(ADHD)、アスペルガー症候群、自閉症など
- 知的障がい:知的障がいなど
- 身体障がい・難病:聴覚障がい、視覚障がい、肢体不自由、難病(障害者総合支援法の対象疾病)など
就労移行支援の利用条件には受給者証を所有していることが含まれているものの、障害者手帳の有無は利用条件に関係ありません。
利用期間
就労移行支援を利用できる期間は原則として2年以内です。2年を通して仕事を見つける人もいれば数ヶ月で見つけられる人もいるため、2年以内のサービス利用であれば、どのくらいの期間利用するかは特に決まりはありません。
この2年間で仕事に必要となるスキルを身につけたり、就職活動の準備を進めたり、実際に企業の選考を受けたりするケースが多くなっています。
利用期間は中断・延長できる?2回目の利用は?
就労移行支援の利用条件では、原則として2年間までしか利用できません。しかし、状況によっては最高で1年の延長、またサービス利用の中断・その後もう一度通うといった柔軟な対応が可能です。
以下のような状況であれば、就労移行支援の中断・延長を行えます。
- 体調不良で辞めたが、回復した
- 家庭の事情で辞めたが、通える状況になった
- 就労移行支援事業所が合わなかったが、別の事業所に通いたい
- 就労移行を利用して一度は就職したが、退職してしまった
ここでは、利用期間中に中断・延長した場合の2回目利用について解説します。
中断
就労移行支援事業所を利用していたものの、何かしらの理由によって中断した場合、同じ事業所で利用を再開するのであれば上限の2年間のうち残りの期間を利用することが可能です。たとえば、最初の1年間利用していたものの、体調を崩して利用できなくなった人が、体調回復後に利用する場合利用期間は残りの1年となります。
複数回利用する場合でも、利用期間は通算されることを覚えておいてください。
延長
先述のとおり、就労移行支援の利用条件は原則として利用できる期間は2年です。ただし、市町村審査会の個別審査を受けて、継続して利用する必要性が認められれば、最大で1年分の延長を行えます。
延長を認めるかどうかは市区町村の意向によって異なるため、必ずしもすべての市区町村で延長できるわけではありません。厚生労働省によると、就労移行支援の延長を認めている市区町村は54%でした。
2年以内で就職できるのが理想的ですが、体調などによっては時間がかかることもあります。そのため、自分が利用しようとしている事業所がある自治体は延長を認めているのかどうかをチェックしておくことをおすすめします。
2回目の利用
1度就労移行支援事業所を利用したものの、体調不良などの理由によって通えなくなった人が2回目の利用をするケースもあります。しかし、自治体によっては複数回の利用を認めていないケースもあるため注意してください。
厚生労働省によると、複数回の就労移行支援事業所の利用を一切認めていない自治体は6%となっています。体調不良や就職後に合わず退職してしまったなど、仕方のない2回目利用も考えられますが、引っ越しなどをする場合に該当の市区町村で就労移行支援の2回目利用が認められているか、利用条件を適宜チェックするのをおすすめします。
なお、複数回利用できる自治体でも、利用期間が1回目からの通算となるのか、リセットされて再度2年間利用できるのかは異なります。
就労移行支援の利用の流れ6ステップ
ここでは、就労移行支援を実際に利用するまでのステップを紹介します。具体的なステップは以下の通りです。
- 就労移行支援事業所を探す
- 就労移行支援事業所を見学する
- 利用する就労移行支援事業所を決める
- 障害福祉サービス受給者証を申請する
- 就労移行支援事業所の利用契約を結ぶ
- 利用開始
まずは、自分にあった就労移行支援事業所を探す必要があります。事業所は各地にあるため、インターネットで調べたり、市区町村役場の福祉課などで相談したりして探してみるのをおすすめします。
気になる事業所があれば、実際に見学へ行ってみるのも大切です。基本的に各事業所では見学を受け付けているため、問い合わせをして日程を決めます。事業所の見学を踏まえて、どれを利用するのか比較しながら検討し、利用先を決めましょう。
利用先が決まったら、就労移行支援の利用条件に含まれる「受給者証の申請・取得」を行います。申し出は各行政窓口の福祉課で申請が可能です。
その後、利用したい就労移行支援事業所との利用契約を結び、実際にサービスの利用が開始となります。
就労移行支援を利用する際の注意点
就労移行支援を利用するにあたって、いくつかの点に注意しなければなりません。
- 自分に合った就労移行支援事業所を選ぶ
- 「受給者証」の発行には時間がかかる
- 就労移行支援の利用中は収入がない
ここでは、就労移行支援を利用する際の注意点について解説します。
自分に合った就労移行支援事業所を選ぶ
就労移行支援事業所によっては、特定の障がいや病気に特化したサポートを行っているケースもあります。利用条件自体を満たしていても、自分のニーズにはあっていない事業所を選ぶと、違和感を生み出してしまったり、時間をムダにしてしまうおそれがあるのも事実です。
そのため、就労移行支援の事業所を探すときは、利用条件だけでなく、どういった人を対象としたサービスなのかもチェックしておきましょう。自分に合った事業所探しでは見学や無料体験が非常に参考になるため、しっかり参加してみるのも大切だといえます。
また、サポート内容だけでなく、事業所のスタッフが自分に合っているかどうかも大切なポイントです。スタッフと一緒に就職に向けて取り組んでいくため、相性の良し悪しもしっかりと確認しておきましょう。
「受給者証」の発行には時間がかかる
就労移行支援事業所の利用条件には、障害福祉サービスを受けられる「受給者証」が含まれます。受給者証の発行には一定の時間がかかるため、「この日までに事業所の利用を開始したい」といった希望を持っている人は、早めの申請がベストです。
受給者証の発行にかかる具体的な日数は市区町村によって異なり、短くて2週間ほど、長いと2ヶ月程度かかるため注意してください。受給者証の発行では、申請書の受理から認定調査やサービス利用計画案の作成などさまざまな手間がかかるため、どうしても時間がかかってしまいます。不安な場合は、早めの段階で受給者証の発行申請をすると安心です。
なお、受給者証の申請・発行には費用はかかりません。
就労移行支援の利用中は収入がない
就労移行支援事業所の利用条件に、「利用中の収入がない」が含まれているケースもあります。就労移行支援中は原則としてアルバイト等が認められないため、一定期間中はどうしても収入を得られません。
家族と同居している場合は、生活をサポートしてもらえますが、一人暮らしなどの場合は事業所を利用している間の生活費をどのようにカバーするのか考えておく必要があります。
なお、市区町村によってはごく稀ではあるものの、事業所に通いながらのアルバイトを認めてくれるケースもあります。
就労移行支援なら「ノードワークス」
今回は就労移行支援の利用条件について解説しました。基本的な利用条件としては「18歳以上65歳未満」「障がいもしくは難病を持っている」「一般企業への就職を希望している」「受給者証を保有している」などがあげられます。
就労移行支援の利用条件に含まれる受給者証は、申請から発行まで2週間~2ヶ月と期間がかかるため、早めの申請がおすすめです。
就労移行支援事業所は各地にあるため、利用条件だけでなく、提供しているサポート内容なども含めて自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
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