COLUMN

コラム

  1. HOME
  2. ブログ
  3. 就労移行支援
  4. 就労移行支援は在宅でも利用できる?在宅訓練の対象者とメリット・デメリット

就労移行支援は在宅でも利用できる?在宅訓練の対象者とメリット・デメリット

昨今の働き方改革により多様で柔軟な働き方が推し進められるようになり、従来の通勤型から、テレワークなど在宅したまま業務を行うなど、働き方にも多様化が広がりつつあります。

そこで今回は、就労移行支援を在宅でも利用できるか、そのメリット、デメリットについてご紹介していきます。

【このコラムを読んでもらいたい方】

  • 就労支援について詳しく知りたい方
  • 就労移行支援の検討中の方
  • 障害により外出が困難な方

【このコラムを読んで得られる情報】

  • 就労移行支援を在宅利用できる対象者について
  • 在宅訓練のメリット・デメリットについて
  • PC機器など準備の必要性について

そもそも就労移行支援とは?

就労移行支援は、障害のある人の社会参加を支援するために「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」に基づく国の障害福祉サービスになります。

障害や難病のある人で、一般企業への就職を希望する人が利用することができます。就労移行支援では、就労に向けたトレーニングや、職場見学・実習、就活などをサポートしてくれます。

厚生労働省の資料によると、令和4年時点で全国に約3,000カ所の事業所があり、35,000人以上の人が利用しています。

出典:厚生労働省「障害福祉サービス等について

対象者

就労移行支援の対象者は、以下のような方たちです。

  • 原則18歳~65歳未満の障害のある人
    (身体・知的・精神障害もしくは難病のある人)
  • 一般企業への就労を希望し、就労が可能であると見込まれる人
  • 障害があり、現在休職中の人

一部、障害者手帳を持っていない方でも利用できる場合があります。

訓練内容

就労移行支援事業所で行われる訓練内容には、主に下記のようなものがあります。

・就労に向けたトレーニング
就労移行支援事業所にいらっしゃる方々は「働きたいのに仕事が見つからない」「就職して一人暮らしがしたい」等の悩みや希望を持っている場合があります。

就労移行支援の利用者は、将来の希望、不安についてスタッフと相談しながら、一般企業等への就職に向けてトレーニングを積んでいきます。プログラムは、事業所によって内容が異なります。

・職場見学/実習
就労移行支援では、利用者の得意なことに合った職場探しをサポートします。

利用者に適した業種や職種を探したり、働きやすい職場環境を模索したりしつつ、職場見学や実習を行うことでご自身に合った職場を探すことができます。

・就職活動/面接練習
就労移行支援事業所が直接職業紹介を行うことは、制度上できません。

そのため、主にハローワークや障害者就業・生活支援センター、障害者職業センター等と連携し、本人にとって最適な職場を見つけるサポートを行います。

・定着支援
就職後は、スタッフと定期的に面談をするなど、就労移行支援事業所の利用者が長期間安定して就労できるよう、職場定着のためのサポートをします。

原則は就労移行支事業所へ通い、対面で訓練を行います。これは通所そのものが通勤訓練も兼ねているからです。

利用料金

就労移行支援をはじめとした障害福祉サービスの利用料金は所得に応じて区分が設定されています。以下は、厚生労働省による負担上限額の一覧表です。

区分 世帯の収入状況 負担上限月額
生活保護 生活保護受給世帯 0円
低所得 市町村民税非課税世帯(注1) 0円
一般1 市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)
※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3)。
9,300円
一般2 上記以外 37,200円

(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。
引用:厚生労働省「障害者の利用者負担

利用料金は利用する施設と世帯収入によって異なりますが、利用者の9割の人が無料で利用しています。

なお、就労移行支援事業所は就職するために訓練を行う場所であるため、通所中に賃金や工賃などは発生しません。

就労移行支援は在宅でも利用できる

就労移行支援は基本的には通所することが基本となりますが、在宅でも訓練を受けることができる場合があります。ここからは在宅で利用できる例をご紹介します。

在宅に特化した機能

就労移行支援で在宅に特化したサービスを利用する場合は、以下の機能が追加されます。

(1)在宅就労へ向けたステップアップのための中間的訓練の機能
利用者の自宅というプライベートな環境の中で支援が行われ、在宅就労ならではの難しさを克服できるように考えられており、現実的な就労への橋渡しの役目を担います。

(2)在宅での職業的適性等を把握するためのアセスメント機能
在宅での行う訓練では、在宅就労に向けて、パソコンスキルやコミュニケーションスキル、自宅の職場環境や支援の見極め、訓練課題などの把握、訓練による疲労や体力などへの影響を確認します。また本人の就労にあたり、家族の考え方などもアセスメントで汲み取ります。

(3)在宅就労を希望する利用者の自己理解を支援し、就労意欲を高める機能
前述のアセスメント情報で利用者本人の特徴を知り、それをもとに就労意欲につなげていくためのものです。在宅就労は自己管理が課せられる就労形態であるため、訓練を通して、正しい自己理解につなげていくことがその後の職場適応に役立ちます。

(4)在宅就労ができる職場を見つけ調整するマッチング機能
在宅で就労移行支援を行う事業所は、企業に対し在宅就労に関する理解や知識を促進させ、在宅雇用ならではのポイントや留意事項を両者に向けて支援していく業務などが含まれます。

(5)就職直後から長期の継続支援を含むフォローアップ機能
在宅での就労移行支援事業でも一般の就労移行支援と同様に、就職後も一定期間の定着支援が求められています。

通勤日がほとんどない在宅勤務の場合や、心身の状況が崩れ気味であっても上司や同僚が気づけていないケースなどの事態も、関係機関と連携してのフォローアップが職場定着の成否に大きな影響を及ぼします。

出典:厚生労働省「在宅における就労移行支援事業ハンドブック

在宅で利用できる施設の割合

厚生労働省が好評している資料によると、在宅で利用できる施設数については令和2年時点で下記の通りとなっています。

厚生労働省・PwC コンサルティング合同会社「就労系障害福祉サービスにおける在宅でのサービス利用にかかるガイドライン」

引用:厚生労働省・PwC コンサルティング合同会社「就労系障害福祉サービスにおける在宅でのサービス利用にかかるガイドライン

在宅対応の調査に回答した就労移行支援事業所1,482カ所のうち、在宅での訓練や生産活動を実施した事業所は436カ所(29.4%)でした。

生産活動だけに絞ると11.5%まで下がり、対応している事業所が少ないことがわかります。在宅での就労移行支援を行っている事業所は少数派であるため、事業所を探すにも難航することが予測されます。

在宅訓練の対象者

在宅訓練の対象者は、基本的に一般の就労移行支援の利用対象者である「就労を希望する65歳未満の障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人」となりますが、これにプラスして、以下の条件に「両方とも」当てはまる人が対象となります。

出典:厚生労働省「在宅における就労移行支援事業ハンドブック

通所が困難である

まず挙げられるのは、通所が困難であることが就労を阻害する要因であり、在宅であれば就労訓練が可能である人です。

具体的には、精神障害により公共交通機関が使えない、化学物質過敏症により周囲の芳香剤や柔軟剤の成分により体調不良になってしまうなど、障害の症状や特性により、通所するにあたって困難が生じる方です。

在宅での事業実施が妥当である

就労移行支援事業の基本プロセスを、在宅で効果的に実施できる人も対象です。就労移行支援事業所の利用を考える方の中には、障害の状況により、通所すること自体が高いハードルになる方もいます。

その場合は、対象者の現状を把握することにより、支援方法を検討します。

下記の表は、就労移行支援を利用する際のチェックリストです。

引用:厚生労働省「在宅における就労移行支援事業ハンドブック

チェックリストの項目にあるように、これは就労や訓練の可否を判断するものではなく、支援者が本人の現状や経過を把握するために使用するリストです。

これらの評価結果をもとに、在宅での事業実施の検討が求められるケースがあります。
一例として、

  • 「服薬管理」が決められたとおりできていない
  • 「体調不良時」に対処できない
  • 「自分の障害や疾病の理解」ができていない
  • 「感情のコントロール」ができずパニックを起こす

があります。

在宅訓練の内容

基本的には冒頭で説明した訓練内容と変わりはありませんが、それらの訓練をオンラインで行います。在宅就労でもメールやオンラインなどを通じてコミュニケーションスキルが必要になるため、在宅訓練でもコミュニケーション訓練も行います。

また、作業訓練については、PCを使用したデータ入力やプログラミングなどが中心になります。

特殊な資格取得などの資格勉強を扱っている事業所もあります。

在宅訓練で取得できる資格

在宅就労では、PCなどのITに関する業種が主になります。そのため、資格についてもIT関連の資格を取得しておくことは在宅勤務を希望する人にとっては大きな強みとなります。
ここで在宅訓練で取得できる資格について一部ご紹介します。

▶ITパスポート
ITリテラシーなどを向上させたり、IT技術を活用できたりするように設けられた、情報技術や情報処理の基礎的な知識に関する国家資格です。情報処理の分野において社会人としてのIT知識を有する証明になる資格です。

▶Microsoft Office Specialist(MOS)
マイクロソフト社が主催するPC操作(Word・Excel・PowerPoint)の国際資格です。マイクロソフト製品の知識や操作スキルを評価するものであり、実践的なパソコンスキルを有することを証明する資格です。就職や転職の際、企業から求められる資格の一つになります。

▶Illustrator(R)クリエイター能力認定試験
グラフィックツール「Illustrator(R)」を使ったDPTファイルやWebデザインで使用するパーツの作成などデザインを使用したコンテンツ作成や活用を評価する資格です。

1日の流れ

ここからは、1日在宅訓練をしている利用者の方について、自宅での過ごし方を見ていきましょう。

・10:20~   オンラインで訓練参加の挨拶、体調確認、連絡事項共有
・10:30~12:00 PC訓練(Excelを使用した訓練)
〈お昼休み〉
・13:00~14:30 PC訓練(Wordを使用した訓練)
・14:45~   本日の振り返り・訓練終了

以下は、半日在宅訓練をしている利用者のタイムスケジュールです。
・12:50~   オンラインで訓練参加の挨拶、体調確認、連絡事項共有
・13:00~14:30 PC訓練(Wordを使用した訓練)
・14:45~   本日の振り返り・訓練終了

在宅就労では、体調に合わせて週2で行うなど、短時間から始められます。将来的に就労するためには、週4~5日、1日6~7時間を目指して訓練を行っていきます。

就労移行支援を在宅で利用するメリット

ここでは、就労移行支援を在宅で利用するメリットを5つご紹介します。

▶通所しなくて良いので、移動の疲れやストレスを回避できる
疲れやすい障害特性の人も、在宅訓練であればご自宅などの慣れた環境で訓練を受けることができるため、ストレスを緩和することができます。

▶人の多い場所が苦手な人も利用しやすい
人が多くいる環境であると落ち着かなかったり、過度のストレスがかかったりする人も、在宅訓練であれば周囲を気にすることなく個別で作業が行えるため、訓練に参加しやすいでしょう。

▶自分の訓練や作業に集中できる
集団訓練と違い在宅訓練であるため、ご本人の状況に合った訓練を行うことが可能です。また、個別で作業を行うことができるため集中して取り組むことができます。

▶リモートワークならではのコミュニケーション方法が身に付く
テレビ会議では画面越しでのやり取りである分、普段以上にリアクションを取ることが必要になります。在宅訓練では、これらのスキルも身に付けることができます。

また、メールやチャットなども使用するため、テレワークに必要なスキルを習得できます。

▶在宅での集中力やモチベーションを維持する方法が身に付く
在宅訓練では個別での作業がメインとなります。このため、周囲の環境を気にすることなく集中して作業に取り組め、集中力の向上も図れます。集中して取り組むことで達成感を得やすく、モチベーションの向上にも繋がるでしょう。

就労移行支援を在宅で利用するデメリット

就労移行支援を在宅で利用する際はデメリットがあることも理解しておきましょう。ここでは代表的なものを5つご紹介します。

▶対応している就労移行支援事業所が少ない
スタッフの人員不足などの事情により、在宅訓練での個別作業に対応している事業所が少ないのが実情です。また定期訪問についても対応できない事業所も多くなっています。

▶運動不足になりやすい
就労移行支援に通所することは、通勤するための体力をつける目的もあります。在宅訓練は主に自宅にいながら訓練を行うため、体力向上のための訓練を行うことができず、運動不足を誘発しやすくなります。

▶自宅で集中できるスペースが必要
就労移行支援を在宅で利用する際は、本人専用の居室など、訓練に集中しやすいワークスペースの確保が必要になります。

▶対面でのコミュニケーションはあまり実践できない
画面越しのコミュニケーションと対面でのコミュニケーションとでは、リアクションや相槌の程度などが異なります。そのため、対面でのコミュニケーションに課題が残りやすいと言えます。

▶雑談が少ないため、他の利用者と親しくなりにくい
個人での作業がメインとなり他の利用者との関りが少ないことで、他者との距離感が近づきにくいのもデメリットと言えるでしょう。また、休憩時間も同様に他者と同じ空間にいないため、話しかけられることも少なくなります。

▶モチベーションが下がりやすい
プライベート空間にて個別作業を行うことで、他者と共感や共有する機会が少なく、孤独感からモチベーションが下がりやすくなる恐れがあります。

よくある質問

ここでは、在宅訓練に関するよくある質問をまとめてご紹介します。

Q:在宅の就労移行支援なら、全く通所しなくて良いですか?

A:制度上、明確な決まりはありませんが、安易に在宅利用を選択してしまうと、その人の持つ本来の力を引きだせない恐れもあるため、事業所ごとに「月に1回」「週に1回」など、独自の制限を設けている場合が多い傾向です。そのため全く事業所に顔を出さなくても良いわけではありません。

Q:どの地域の就労移行支援事業所でも利用できますか?

A:特に地域の制限はありません。ただし、スタッフによる「定期訪問」や「緊急時訪問ができる」といったルールがあるため、遠方の事業所などは利用することができません。また事業所ごとに通所する回数を設けていることが多いため、通所することも念頭にいれた事業所選びが必要になります。

Q:パソコンやインターネット環境は自分で用意する必要がありますか?

A:在宅訓練では、PC機器やインターネット環境などを準備することが必須になります。
一部の就労移行支援事業所によっては、Wi-Fi機器の貸与やネット回線開通のサポートをしてくれたりする事業所もあります。そのため、検討する事業所があれば事前に確認すると良いでしょう。

在宅での就労移行支援はメリット・デメリットをよく考えて選ぼう!

在宅訓練は、体調が安定しない、公共交通機関を利用することが難しいなどの困難に左右されることなく、自宅で訓練ができるという面では便利な方法です。

しかし、将来的な就職を考えると、さまざまな訓練が行える点から通所の就労支援を選択することがおすすめです。

また、通所することでコミュニケーション力も身に付いたり、同じ就職という目標に向かって切磋琢磨することで自然と仲間もできたりしやすいメリットもあります。

ノードワークスは「自分の“なりたい”を実現する」就労移行支援事業所です。就職することはもちろんのこと、就職活動だけでなく、生涯役立つスキルを身に付けることを目指します。また、就職後は仕事を継続できるように定期的なサポートも行っているため、安心してご利用いただけます。

ご興味のある方は、ホームページの「お問い合わせ」もしくはお電話でご連絡ください。

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

関連記事