就労移行支援の利用期間はどれくらい?利用者の平均や延長の方法も紹介
就労移行支援事業所とは、障害者総合支援法に基づいて提供される福祉サービスの1つです。一般企業への就職を目指す障がいや難病を抱えている人が、就職活動などのサポートを受けることができます。この記事では、就労移行支援事業所の概要や利用対象者の条件、利用することで得られるメリットなどを紹介します。また、どういった人におすすめなのかも取り上げています。ぜひ参考にしてください。
このコラムを読んでもらいたい方
- 就労移行支援の利用を検討している方やそのご家族
- 一度就労移行支援を利用したことがあり、再度利用を考えている方
- 2年間が過ぎ利用延長を行いたい方
- 利用期間が終了した後、再度就労移行支援を利用したいと考えている方
このコラムを読んで得られる情報
- 就労移行支援事業所の利用期間は何年か
- 利用期間を延長することは可能か
- 利用期間を延長するための方法は何か
- 利用期間が終了してしまった後に再度申請はできるか
就労移行支援事業所とは
就労移行支援事業所とは、障がいのある人や難病を抱えている人が社会参加できるように支援する障がい福祉サービスの提供場所です。「障害者総合支援法」という法律に基づき設置されています。具体的には、一般企業への就職を目指している人が仕事に関する知識やスキルなどを向上させ、実習で経験を積み、就職活動をサポートします。
就労移行支援事業所を利用する際は、国からの補助が受けられるため、世帯所得にもよりますが利用料の総額1割を上限に、負担上限額が決められています。多くの人は金銭的な負担を抑えた状態でのサービス利用が可能です。就職を目指しているものの、なかなかうまくいかない人にとっては、大きな助けとなるでしょう。
対象者
就労移行支援事業所を利用するには、以下のような条件を満たしている必要があります。
- 18~65歳で一般企業への就職を目指している人
- 障がいや難病を抱えている人
障がいの具体的な例としては、以下のようなものがあります。
- 精神障がい:統合失調症、うつ病、双極性障がい、不安障がい、適応障がい、てんかん、アルコール依存症など
- 発達障がい:注意欠如・多動性障がい(ADHD)、学習障がい、アスペルガー症候群、自閉症、広汎性発達障がいなど
- 身体障がい:難聴・聴覚障がい・視覚障がい
- 肢体不自由・内部障がいなど
- 知的障がい:知的障がいなど
- 難病・その他:障がい者総合支援法の対象疾病
サービス内容
就労支援事業所で提供されるサービスには、以下のようなものがあります。
- 就労に向けたトレーニング
- 職場見学
- 実習
- 就職活動
- 面接練習
- 定着支援
それぞれの内容について、詳しく説明していきます。
・就労に向けたトレーニング
「働きたいのに仕事が見つからない」「就職して一人暮らしがしたい」等、就労移行支援事業所を利用する方の希望はさまざまです。就労に向けたトレーニングでは、就職やその先の将来の希望、不安などについてスタッフと相談しながら、一般企業等への就職に向け事業所や企業に通うことで就労に必要な知識・能力の向上を目指します。提供しているプログラムは事業所によって異なります。
・職場見学・実習
就労移行支援では、利用者の得意に合った職場探しをサポートします。利用者に合った業種や職種を探したり、働きやすい職場環境を考えたりするために、職場見学や実習を行うことでご自身に合った職場を探すことができます。
・就職活動・面接練習
就労移行支援事業所が直接職業紹介を行うことは、制度上できません。障がい者就業・生活支援センター、障がい者職業センター等と連携し、本人にとって最適な職場を見つけるサポートを行うことが、主な役割となります。
・定着支援
就職後、スタッフと定期的に面談をするなど、職場定着のサポートを受けることができます。
就労移行支援の利用期間
就労移行支援を利用できる期間は原則として2年以内です。2年を通して仕事を見つける人もいれば数カ月で見つけられる人もいるため、2年以内のサービス利用であれば、期間について特に決まりはありません。この2年間で仕事に必要となるスキルを身につけたり、就職活動の準備を進めたり、実際に企業の選考を受けたりするケースが多くなっています。
まとめると、以下の通りです。
- 原則2年(24カ月)が上限です。
- 利用期間は人によって異なります。
- 体調が不安定で通うペースが少ない人や、就活の難易度が高くて長期間かかる人もいます。
- 利用期間については、早い人で半年、長い人で2年かかります。1年程度で卒業する人が多くいます。
- 2年以内で終了したときは、残りの期間で2回目の利用ができます。
【事例1】早く働きたいAさん
Aさんには、就労移行支援の利用から6カ月後には就労したいという希望があったため、就職活動の準備を2カ月でおこない、その後2カ月間の企業インターンを行いました。就職活動の準備では、特にAさん自身に苦手意識があったストレスコントロールや、アンガーマネジメントのプログラムを受講して、自己表現や無理のない適切なストレス処理の方法を学びました。
また、企業インターンに参加したことで、今まで気づかなかった仕事への適性やおもしろさに気付き自信が深まりました。
トレーニング→2カ月
アサーティブコミュニケーション、アンガーマネジメント、傾聴、リフレーミング等の講座への参加
企業インターン→2カ月
作業系や事務系、小売業などさまざまな業務を経験
就職活動→2カ月
ハローワークと連携してサービス業の求人に応募し、採用面接を経て無事に就職
【事例2】無理なく慣らしていきたいBさん
Bさんは「週3日、朝決まった時間に起きて就労移行支援事業所に通う」という生活リズムを作ることからはじめました。その中でゆっくりと朝、決まった時間に起きることができるようになり、事業所では体調管理力や自身の障がいに対する理解、ビジネススキルを身につけるプログラムを受講しました。また、自分に最も合う職種や業種を見つけたいというニーズに基づいて、焦ることなく実際の企業での実習にも力を入れ、さまざまな仕事を経験しました。企業実習に時間をかけたことにより就職のミスマッチが防げたため、無理なく働き続けることができています。
トレーニング→18カ月
障がい理解、セルフケア、目標設定、ビジネスマナー、企業の求める人材像等の講座への参加
企業実習→3カ月
軽作業系や事務系を中心に企業実習に参加し、仕事における自分の得意・不得意を見つめ直す
就職活動→3カ月
10社のオープン求人に応募、障がい特性の伝え方に試行錯誤の結果、無事に就職
利用期間は延長できる場合がある
「就労移行支援の利用期間は原則2年であることは分かった。でも、それって期間を延長することはできないの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。そこで、ここからは利用期間を延ばすことが可能かどうかを見ていきましょう。
就労移行支援の利用期間は、原則2年間です。しかし、やむを得ない事情等により市区町村に延長の申請をすると、最長12カ月間の延長が認められることがあります。ただし、申請したからといって必ず延長できるわけではないので注意が必要です。あくまでも、利用期間を延長することで「就職の見込みがある」と市区町村が認めた方のみです。
必要性が認められる場合の具体例は以下の通りです。
- 採用が内定しているが、採用日までに日があり、訓練を希望している場合
- 利用期間の終了日が職場実習中の場合
- 近いうちに職場実習の予定がある場合
- コロナ禍の影響で就活が難航している場合
就労移行支援の延長は可能ですが、そのためには市区町村に申請をして認められることが必要ということに注意してください。
利用期間の延長の実態
就労移行支援の標準利用期間(2年間)を超えて更新を行う場合や、就労移行支援の複数回利用希望があった場合の取り扱いに関して、自治体によっては個別の対象者の状況を勘案せず、一律の取り扱いが行われているのが実情です。就労移行支援の利用等に関して、各自治体は個々の対象者の状況を勘案して、サービスの利用を判断する必要があると言えるでしょう。
厚生労働省が公表している資料「就労移行支援事業における利用更新等について」によると、利用更新(=延長)を行った自治体は、全体の54%です。また、2年を超えた場合の延長期間は以下の通りでした。
- 1年の設定→70%
- 7カ月~1年間の設定→2%
- 1カ月~6カ月の設定→5%
- 個別設定→21%
更新を行っていない自治体も、理由を見ると「期間内で終了したため」や「延長希望がないため」が大半で、却下しているわけではなさそうです。このことから、延長申請は比較的通りやすいと思われます。
出典:厚生労働省「就労移行支援事業における利用更新等について」
利用期間を延長するための申請方法
申請する方法については自治体によってさまざまです。就労移行支援事業所のスタッフにサポートをお願いすることで確実な手続きが可能となります。ここでは、延長が認められるまでのステップについてご紹介します。
本人もしくは就労移行支援事業所が延長申請書を作成し、お住まいの自治体に申請します。
- 自治体の審査会が提出書類をもとに延長の可否について審査します。
- 自治体の審議の結果、延長の必要性を認められた場合、支給が決定します。
審査には時間がかかります。利用終了の1~2カ月前には延長の申請をしておきましょう。
利用期間の延長に必要な書類の例
申請時に求められる可能性の高い書類は、以下の通りです。
- 通所開始時の個別支援計画書
- 直近の個別支援計画書
- 訓練等給付等延長意見書 ・支援内容報告書(審査会審議用)
市区町村によって必要な書類やフォーマットは異なる場合があります。2年間を超えて延長利用をしたい場合は、通所先事業所の支援員に相談するとよいでしょう。
コロナ禍における特例措置
就労移行支援事業所の利用期間について、原則は2年までであり、延長は市区町村の判断で1回限り最大1年までと定められていました。しかし、コロナ禍の影響でテレワーク導入が拡大するなど一般企業の働き方が急速に変わったため、就労移行の訓練内容では対応できないケースも考えられるようになりました。そのため、例外的に利用期間の延長を複数回認める通達が出されました。あくまで市区町村の判断となるため、必ず延長できるわけではない点に注意しましょう。
出典:厚生労働省「新型コロナウイルスへの対応に伴う就労継続支援事業の取扱い等について(第8報)」
延長は1回だけでなく複数回も可能
以前は「就労移行支援の利用延長は最大1年かつ1回のみ」とされていたところ、現在は「利用延長は最大1年間の中で複数回行える」よう変更となりました(2023年11月時点)。これにより延長に必要な期間を短く設定することができるようになり、個々人のニーズに合わせた支援を受けやすくなっています。
引用:厚生労働省「新型コロナウイルスへの対応に伴う就労継続支援事業の取扱い等について(第8報)」
3年目を終了した後、リセットして新たに2年間の利用も可能
コロナ禍の影響で、これまでは就労移行支援の利用期間は「原則2年+延長1年」であったところ、その期間を過ぎて再度利用することができるようになりました。市区町村によって判断はさまざまですが、一般的には更新時点で一般就労への具体的な見通しがあることが期間延長の条件とされています。
延長できる人の具体例は、下記のとおりです。
- 採用が内定している
- 職場実習中
- 職場実習の予定がある
上記に該当しなくても、延長を希望する人は事業所や市区町村の障がい福祉課、または相談支援員に一度相談してみましょう。
引用:厚生労働省「新型コロナウイルスへの対応に伴う就労継続支援事業の取扱い等について(第8報)」
就労移行支援なら「ノードワークス」
今回は、就労移行支援の利用期間について解説しました。原則として利用期間は「2年間」となりますが、状況によっては延長・再利用ができます。就労移行支援事業所は各地にあるため、利用条件だけでなく、提供しているサポート内容なども含めて自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
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